植木鉢に、土を一杯入れて植物を植え、数年間植え替えをしないでいると、中に入れた土が全部消えてしまい、植物の根だけが鉢中一杯に詰まっている。

鉢の中に入れた土は、何処に行ってしまったのであろうか。


その答えは、書籍などにも載っていない。どうして、鉢中の土が全部植物の根と入れ替わってしまったのか。その答えは、植物の根が酸を出して土を溶かして吸収し、自分の身体としてしまったからである。


自然を観ても、自然芋・自然薯は地中に伸びて行くのに、自分の根から酸を出して、土を溶かしながら穴を空けて行き、その穴の中に自分の栄養・澱粉を芋として留め込んで行く。

特に、自然芋や薩摩芋、ジャガ芋は「粘土(アルミと珪素の化合物)」が好きで、粘土を与えると健康に良く育つ。

それは、芋類がアルミや珪素分を好んで吸収するからであろう。


「土を食らう」との言葉も使用されているが、それが、どんな過程を経てそう成るのかは、未だ明確にはされていない。

植物に必要な物は、腐葉土だと考え、堆肥を多く投入すれば、良い食料が得られるとの考えぐらいしかないのではないだろうか。

腐葉土が、何故、微生物の栄養と成ったり、海に流れ出てプランクトンや、海草や、貝の栄養に成るのかの研究は、未だ浅いものである。


木の葉の成分にも、やはり根で溶かされ、吸収された土(鉱物の微量要素)の成分が含まれているのだ。その植物や、海草等を食べる事で、動物はいのちを継続している。


動物が生きて行く為には、何十種類のミネラルを必要とする。それらを皆、植物の能力に依存しているのだ。

植物は根で鉱物を溶かし、葉では太陽のエネルギーを利用しながら炭酸同化作用をして、無機物を有機物へと変換している。

動物は、其の植物の働きに全部を依存していると言えるだろう。


その植物の源は、36億年前の原始微生物である。36億年前、最初に地球に現れた微生物は、酸を利用して岩石を溶かし、其れをエネルギーとして生き始めたとされている。

其の岩を溶かして生き始めた微生物が、炭酸ガスを食べ始め、酸素を吐き出して現在の地球の環境を造り出している。


その微生物が進化し、植物となり、その植物を利用して生きる、動物を生み出して来た。私達人類も、その生態系の一部として進化して来た生物である。

では、私達の肉体の何処に、そのシステムが残っているのだろうか。


私達の身体の、臓器の一部と成っている胃の細胞が、36億年前の微生物のプログラムを伝えている。

胃の細胞は、胃袋に入って来た材料を、酸を出して溶かす役目を担っており、十二指腸と膵臓はその酸を中和する為に、アルカリ分を出して小腸に送る。

小腸は、その溶液の中から栄養分を吸収するのである。

人間の身体の仕組みは、植物の延長線上に在るのだ。


胃の細胞は、自然芋の芋に生えている白い根と同根であり、小腸の絨毛は、落ち葉の下に広がる栄養吸収の為の、黒い根と同じ役目を果しているのである。

動物の胃腸と、植物の根のシステムは裏返しに成っており、肺臓のガス交換と同じく、互いに協力関係に有るのだ。


植物は、無機物を有機物に変え、動物は受粉を助けたり、種子を運んだりして、植物の繁殖を手助けしている。動物は、一ヶ所から動けない植物の手助けとして、此の地球に生じた生物なのかも知れないのだ。

そうであれば、植物の生態を調べるしか、動物や人間の真実は見えてこない。


植木鉢の土が、何処へ消えてしまったのか。それを知る事で、人間の存在の秘密も見えて来る。

それには、釈迦仏陀の訓えに有る様に、精進しながら、自然の中で自分自身を見詰め続けて行くしか、他に道は無いのではないだろうか。


-2005年4月-





植木鉢の土は何処へ消えたのか